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透明で目立ちにくく、着脱が可能なマウスピース型矯正装置「インビザライン・システム」は、成人向けの総合的な治療から、前歯部を対象とする部分的な治療(インビザラインGO)、そして成長期のお子様を対象とした治療(インビザライン・ファースト)まで、幅広いニーズに対応する治療法として広く選択されております。
しかしながら、本治療法をご選択いただくにあたり、日本の**医薬品医療機器等法(薬機法)**における位置付けや、治療に伴う費用、潜在的なリスクについて、事前に十分にご理解いただく必要がございます。
本稿では、患者の皆様が十分な情報に基づき、安心して治療に臨んでいただけますよう、インビザライン・システムに関する6つの重要事項を、フォーマルな形式でご説明いたします。
①薬機法における未承認医療機器としての位置付け
初めに、最も重要な事項として、インビザライン・システム(インビザライン、インビザライン・ファースト、インビザラインGOを含むすべての製品)は、日本の**医薬品医療機器等法(薬機法)**に基づく承認を得ていない「未承認医療機器」であることをご説明いたします。
未承認の理由
これは、装置の品質や安全性に問題があることを意味するものではございません。 日本の薬機法において医療機器として承認されるためには、国内の国家資格を有する歯科医師または歯科技工士が設計・製作に直接関与することが要件の一つとされています。 インビザラインは、患者様一人ひとりの歯型データに基づき、海外の製造拠点でロボット技術を用いてカスタムメイドされるため、この要件に該当せず、「完成物薬機法対象外」の扱いとなります。
正規の入手経路
当院をはじめとする正規取扱医療機関は、米アライン・テクノロジー社の日本法人である「アライン・テクノロジー・ジャパン株式会社」を通じて、本システムを正規に入手しております。
②本国内における承認済み代替治療の存在
インビザライン・システムは未承認医療機器ですが、日本国内で製造され、薬機法の承認を取得したマウスピース型矯正装置も複数存在いたします。 治療法をご検討される際には、これらの代替選択肢についても担当歯科医師にご確認いただくことが可能です。
③外国における安全性と豊富な臨床実績
日本国内では未承認ですが、インビザライン・システムは国際的に広く認知され、豊富な臨床実績を持つ確立された治療法でございます。
米国食品医薬品局(FDA)による認証
本システムは、1998年に米国の政府機関である**FDA(食品医薬品局)**より医療機器としての認証を受けており、その安全性と有効性が国際的な基準で評価されています。
世界的な普及実績
これまでに世界100カ国以上で導入され、累計1,500万人を超える患者様が本治療を受けておられます(2023年時点)。 この広範な普及は、その信頼性を示すものと言えます。
安全性に関する情報
現在に至るまで、一般的な歯科矯正治療に伴うリスクを除き、インビザライン・システムに固有の重大な副作用は報告されておりません。
④医薬品副作用被害救済制度の適用対象外であること
インビザライン・システムは薬機法上の承認を得た医療機器ではないため、医薬品の副作用によって生じた健康被害に対して公的な救済給付を行う「医薬品副作用被害救済制度」の適用対象外となります。 これは、万が一重篤な健康被害が発生した場合の公的補償に関する重要な情報ですので、必ずご承知おきください。
⑤治療費用・期間・通院回数の目安
本治療は、公的医療保険の適用外である自由診療となります。 費用、期間、回数は、患者様個々の歯列の状態、治療計画の範囲や複雑さにより変動いたします。 以下に示す内容は、あくまで一般的な目安としてご参照ください。
費用の目安
- インビザライン・フル(全顎矯正): 約80万円~100万円
- インビザラインGO(部分矯正): 約30万円~60万円
- インビザライン・ファースト(小児矯正): 約40万円~60万円
※上記に加え、初診相談料、精密検査・診断料(約3~5万円)、治療後の**保定装置(リテーナー)**代などが別途必要となる場合がございます。
治療期間の目安
全顎的な治療の場合、約1年から3年程度を要するのが一般的です。 部分的な矯正(インビザラインGO)では、より短期間で完了する場合もございます。
通院回数の目安
治療経過の確認のため、概ね1ヶ月から3ヶ月に一度の頻度でご来院いただくのが標準的です。
⑥主なリスクおよび副作用について
インビザライン・システムは安全性の高い治療法として確立されておりますが、他の全ての歯科矯正治療と同様に、以下に挙げるような潜在的なリスクおよび副作用の可能性がございます。
口腔衛生状態の悪化に伴うリスク
アライナー装着中は、通常時よりも口腔ケアが煩雑になるため、清掃が不十分な場合、虫歯や歯周病のリスクが増大する可能性がございます。日々の丁寧なブラッシングとアライナーの洗浄が不可欠となります。
治療計画の遅延
1日20時間以上という規定の装着時間を遵守いただけない場合、歯が計画通りに移動せず、治療期間が延長する可能性がございます。
治療後の後戻り
治療完了後、歯列を安定させるための**保定装置(リテーナー)**を指示通りにご使用いただけない場合、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が生じる可能性がございます。
治療初期の痛みや違和感
新しいアライナーに交換した直後の数日間は、歯が移動することによる痛みや圧迫感、違和感を生じることがございますが、これらは正常な反応です。
その他の潜在的リスク
ごく稀に、歯根が短くなる歯根吸収や、歯を動かすスペースを確保するために歯の表面を僅かに削る処置(IPR)が必要となる場合がございます。
結論:十分なご理解の上での治療選択
インビザライン・システムは、審美性に配慮しながら歯列を改善できる、非常に優れた治療選択肢の一つです。 しかしながら、その利点を享受するためには、本稿でご説明いたしました法的側面、費用、そして潜在的リスクについても正しくご理解いただくことが不可欠です。
治療を開始される前には、必ず担当の歯科医師から十分な説明をお受けになり、全ての事項にご納得いただいた上でご判断いただくことが極めて重要となります。
ご不明な点がございましたら、どのようなことでもお気軽に担当歯科医師までお尋ねください